敬うべきものがある生活
「最近すぐに怒るようになったんです」認知症外来でご家族から相談があった。たとえば、いつも昼になっても起きてこないから起きるように言うと激怒するという。認知症では相手を否定してはいけないと聞いたが、なんでも放っておいたら...
「最近すぐに怒るようになったんです」認知症外来でご家族から相談があった。たとえば、いつも昼になっても起きてこないから起きるように言うと激怒するという。認知症では相手を否定してはいけないと聞いたが、なんでも放っておいたら...
手首から先が無くなった寝たきりの方のことをお伝えしたのを覚えておられるだろうか(病と生きる(35)「尊厳が損なわれるとき」)。先日息を引き取られた。外来にご自分で歩いて通っておられたときから、もう十年以上関わらせていた...
先月号でお話しした、まもなく百歳の女性のその後をお伝えしたい。それからも食事はほとんど摂らず、徐々に身体は衰えていった。素っ気ない態度は変わらず、別に何もしてもらうことはないといって口を閉ざし、それ以上のお話はできずに...
「苦しまないように最期を迎えられるようにしてください」介護施設から紹介され入院した、まもなく百歳になる女性のご家族の希望である。しかし現在とくに症状はない。ではなぜ入院したかといえば、食事が摂れなくなったからだという。...
これまで「病と生きる」というテーマで書き続けている。この「病と生きる」の主体はまず患者として出会った一人一人である。その方々が病を抱えて生きる姿を、仏教を通して私がどのように受け止めるかということがまず一つの課題である...
認知症という病気は、患者さん自身の訴えは少なく、付き添いのご家族の訴えが多い。ご家族の心境として、運動の障害ならば心配というかたちで表れるが、同じ障害でも記憶の障害は心配ではなくしばしば怒りになる。 先日も、家で大声...
遺伝性神経難病の相談会に参加したときのことである。何人かの医師や看護師がグループで相談を受ける側となり各部屋に待機する。そこに患者さんやご家族が入る。私はそのとき初めての参加だったので、勉強させていただくつもりで、遺伝...
いつも定期受診される女性のことである。認知症と診断されているが、一見会話も普通にできるし、一人暮らしをしている。その日はなんとなくふらつくということであった。症状はあまりはっきりしない。このところ私自身の課題として、生...
このところ続けて臨終に立ち会った。先日も当直室に待機していると看護師から連絡が入った。聴診器とペンライトを持って病室に向かう。心停止、呼吸停止、瞳孔散大(対光反射消失)の三徴候を確認し、死亡時刻を告げる。最後に手を合わ...
誰しも自分の思いのままに行動したいと思う。しかしその行動が自他を傷つけるとしたらどうだろうか。以前認知症について、自我が崩れるという観点から考察したが、逆に自我が引き起こす問題についても考えてみたい。 認知症と診断さ...