学問と実践
しばらく仏教学の博士論文に専念するため、連載をお休みさせていただいた。世親(天親菩薩)の兄である無著が偈頌を製作し、世親が註釈を施したといわれる『大乗荘厳経論』と、安慧による註釈を中心として、初期唯識思想を研究している...
しばらく仏教学の博士論文に専念するため、連載をお休みさせていただいた。世親(天親菩薩)の兄である無著が偈頌を製作し、世親が註釈を施したといわれる『大乗荘厳経論』と、安慧による註釈を中心として、初期唯識思想を研究している...
「私は親の面倒を一生懸命みてきた。自分も娘にそうしてもらえると思ったら孫のことばかりで、私が困っていても助けてくれない。苦労して育てたのに。つまらん人生だった。」神経難病で入院中の女性の言葉である。 してほしいことを...
先日放送されたNHKスペシャル「彼女は安楽死を選んだ」には大きな衝撃を受けた。神経難病の多系統萎縮症《たけいとういしゅくしょう》を患う方が、身体の機能を失って生きることに尊厳を見出せないと言い、「私が私であるうちに安楽...
研修医のころのある日。鈍く重い音が聞こえたと思ったら、すぐに院内放送が入った。「CPR、CPR、三階北病棟」CPRコールとは、院内で心肺停止などの緊急事態が発生したときに、医師や看護師がすぐ駆けつけるように知らせる放送...
「最近すぐに怒るようになったんです」認知症外来でご家族から相談があった。たとえば、いつも昼になっても起きてこないから起きるように言うと激怒するという。認知症では相手を否定してはいけないと聞いたが、なんでも放っておいたら...
手首から先が無くなった寝たきりの方のことをお伝えしたのを覚えておられるだろうか(病と生きる(35)「尊厳が損なわれるとき」)。先日息を引き取られた。外来にご自分で歩いて通っておられたときから、もう十年以上関わらせていた...
先月号でお話しした、まもなく百歳の女性のその後をお伝えしたい。それからも食事はほとんど摂らず、徐々に身体は衰えていった。素っ気ない態度は変わらず、別に何もしてもらうことはないといって口を閉ざし、それ以上のお話はできずに...
「苦しまないように最期を迎えられるようにしてください」介護施設から紹介され入院した、まもなく百歳になる女性のご家族の希望である。しかし現在とくに症状はない。ではなぜ入院したかといえば、食事が摂れなくなったからだという。...
これまで「病と生きる」というテーマで書き続けている。この「病と生きる」の主体はまず患者として出会った一人一人である。その方々が病を抱えて生きる姿を、仏教を通して私がどのように受け止めるかということがまず一つの課題である...