此土において浄土を映す
ある介護施設での出来事である。認知症と診断されている一人の女性がデイサービスに通っていた。彼女のことで問題が起こっていると会議で話題となった。他の利用者から苦情がでているというのである。彼女は、レクリエーションなどデイ...
ある介護施設での出来事である。認知症と診断されている一人の女性がデイサービスに通っていた。彼女のことで問題が起こっていると会議で話題となった。他の利用者から苦情がでているというのである。彼女は、レクリエーションなどデイ...
研修医だったときのことである。八十歳代半ばで脳梗塞から寝たきりとなった女性だったが、わずかだが食事も摂れるようになり、徐々に回復しているように思われた。しかしある日、看護師が巡回したとき、彼女はすでに心肺停止状態であっ...
しばらく入院生活が続いていた人が、ようやく退院できるようになった。「やっぱり健康が一番ですな」「そうですな」という会話が挨拶のように交わされるのをよく耳にする。長らく療養生活が続くと、そう言いたくなるのも無理はない。こ...
ある当直の日のことだった。病棟は落ち着いており、何事もなく朝を迎えられそうだと思いながら眠りについた。 午前三時頃、電話が鳴った。看護師が非常に切迫した調子で「とにかく来てください」という。急変かと思ったがそうではな...
いつも認知症外来に来られる患者さんのことである。最近はいつもニコニコされていることが多かったのだが、その日は診察室に入ったときからむっつりと黙り、険しい表情をされていた。話せないわけではないが、普段から認知症のためにス...
コミュニケーションがとれなくなる疾患は、ALSの他にも様々ある。脊髄小脳変性症《せきずいしょうのうへんせいしょう》(SCD)もその一つだ。その名の通り脊髄と小脳が変性する難病である。ALSと同じく、透明文字盤などを使用...
大学病院では神経内科医としての仕事以外に、リハビリ科を担当することがあった。神経疾患のリハビリ以外に、心疾患のある方が心機能などを回復するための「心臓リハビリテーション」というものがある。あるとき重度な先天性心疾患で、...
「私は胃瘻や人工呼吸器などの延命治療はしない」先日あるALSの患者さんはそう意思を示された。その決断は非常に重い。このように決断された方はこれまでにも少なくなかった。しかしその度に気になっていることがある。「延命治療」...
旅の後半は、村にホームステイをしながら皆さんの生活に触れる。ライトハウスを後にした我われ一行は、さらに北に位置するクンダーン村へと向かった。 村の寺に到着したのは、日も傾きかけたころであった。そこで我われを待っていた...
タイの東北地方を訪問した「逝き生きツアー」の前半は、「ライトハウス」と呼ばれる仏教の瞑想道場に宿泊した。私はここで上座部仏教の僧侶や参加者の前でお話をする機会をいただいた。「共に苦悩する心」という講題で話し、意見交換を...