ご苦労様でした
先日、ALSの患者さんが四十三年の生涯を終えられた。昨年十月には手紙を書き(病と生きる(72))、本年三月号には眼が見開いたことを記したばかりであった(病と生きる(76))。長い闘病であった。私ができることは何もなかった...
先日、ALSの患者さんが四十三年の生涯を終えられた。昨年十月には手紙を書き(病と生きる(72))、本年三月号には眼が見開いたことを記したばかりであった(病と生きる(76))。長い闘病であった。私ができることは何もなかった...
もうすぐ百歳になろうかという方が介護施設から入院してこられた。もうしばらく寝たきりであった。食事が食べられなくなったから「原因を調べてほしい」ということらしい。少し耳を疑った。限りある生命は、いずれ手足も胃腸も脳も働き...
コロナ禍と他者 危惧していたことが現実になった。医療が受けられないままに新型コロナによって自宅で亡くなっていく方が続出している。妊婦の方が入院できず自宅で出産し新生児が亡くなるという痛ましいニュースも耳にした。大変な非常...
大脳皮質基底核症候群という神経難病の方が入院された。病状は進行しており、寝たきりである。そんな重度の障害がある場合、いつ急変するかわからないことから、急変時に延命治療をするかどうか、あらかじめ意思を確かめることが多い。そ...
病室でふと床頭台に目を遣ると、一通の一筆箋があるのに気がついた。奥様からのお手紙であった。いつからそこにあったのだろうか。傍らには他にも何通も置かれていた。コロナ禍の今、病院では直接の面会はできない。受付で受け取ったもの...
多発性硬化症《たはつせいこうかしょう》(MS)という神経疾患がある。神経細胞を覆っている髄鞘《ずいしょう》という部位に対して自己の免疫が誤ってはたらき、神経障害が多発する。投薬によって症状は一旦改善するが、繰り返し再発す...
顔(1) 「生きた一人の人間が理解を絶して無限に複雑であるならば、それを歴史の影響、社会の影響、等々に分解して何かわかったような気持ちになったとしても、何になろう。大切なことは、眼前の一人の人間が理解を絶して生きているそ...
「呼吸がおかしいからすぐ来てほしい」当直中、慌てた様子で看護師から電話があった。駆けつけると、まさに呼吸が止まろうとしていた。療養型の病院では、最期の看取りのときにそのように呼ばれることが多い。カルテにNo CPR(心肺...
たまたま『アンサングシンデレラ』という病院薬剤師が主役の漫画を手にした。最近ドラマ化したらしい。それを読んで17年前のことを思い出した。私は大学病院で神経内科の研修を終えた後、市民病院で内科の研修中で、呼吸器内科を回って...
「私は死んだ」そんな奇妙なことを言うのだ、と認知症外来でご家族から相談があった。夢を見たとか、そういうことではなく、死んだのだという。あまり流暢にはお話はできないが、直接尋ねても「そう、死んだ」とそこだけははっきりと答え...
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