自我と自己
いつものように一人の男性が、息子さんに連れ添われ認知症外来に受診された。そのお顔は笑顔とも憂え顔ともつかない、感情がなくなってしまったかのようにみえる。目は合うが、話しかけても返事をされることはなく、私はまだ一度も彼の...
いつものように一人の男性が、息子さんに連れ添われ認知症外来に受診された。そのお顔は笑顔とも憂え顔ともつかない、感情がなくなってしまったかのようにみえる。目は合うが、話しかけても返事をされることはなく、私はまだ一度も彼の...
ある介護施設での出来事である。認知症と診断されている一人の女性がデイサービスに通っていた。彼女のことで問題が起こっていると会議で話題となった。他の利用者から苦情がでているというのである。彼女は、レクリエーションなどデイ...
いつも認知症外来に来られる患者さんのことである。最近はいつもニコニコされていることが多かったのだが、その日は診察室に入ったときからむっつりと黙り、険しい表情をされていた。話せないわけではないが、普段から認知症のためにス...
最近は病院で「認知症外来」も受け持っているのだが、ご家族からしばしばこのように相談を受ける。「仕事を辞めて以来、夫はずっと家でごろごろしている。何かをしてほしいんですけど。」 そうして、何か趣味を見つけましょうとか、...
受念寺に併設する老人ホーム「受念館」は軽費老人ホームという形態で、もともと生活が自立している人の施設であった。しかし現在、介護が必要な人が増え、いわゆる認知症という診断がついている方も少なくない。施設内では、一見意味も...
入院されている患者さんの相談を受けた。以前認知症という診断を受けたが本当にそうなのか診てほしいと言うことであった。初診のときによく行う検査に「長谷川式簡易知能評価スケール」というものがある。今日の日付を尋ねたり、単語を...
「あんなふうになる前に死にたい」重い認知症の患者さんについて、このように言うのを病棟で耳にすることがある。それを聞く度に何とも言えない悲しい気持ちになる。認知症の患者さんには、食事の介助をはじめ、入浴介助、下の世話まで...