自己に帰ろうとする意欲
[この記事は『崇信』二〇二三年八月号(第六三二号)「病と生きる(92)」に掲載されたものです] 先日、最近認知症外来に通い始めたあるかたが、話し始めるなりこうおっしゃった。「何もする気が起こらない。早く死んでしまいたい」...
[この記事は『崇信』二〇二三年八月号(第六三二号)「病と生きる(92)」に掲載されたものです] 先日、最近認知症外来に通い始めたあるかたが、話し始めるなりこうおっしゃった。「何もする気が起こらない。早く死んでしまいたい」...
もうすぐ百歳になろうかという方が介護施設から入院してこられた。もうしばらく寝たきりであった。食事が食べられなくなったから「原因を調べてほしい」ということらしい。少し耳を疑った。限りある生命は、いずれ手足も胃腸も脳も働き...
大脳皮質基底核症候群という神経難病の方が入院された。病状は進行しており、寝たきりである。そんな重度の障害がある場合、いつ急変するかわからないことから、急変時に延命治療をするかどうか、あらかじめ意思を確かめることが多い。そ...
筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断されている一人の女性が入院された。介護する家族の休息のため一時的に入院することを、レスパイト(休息)入院と呼ぶ。今回は一週間弱の入院である。現在動く筋肉はほとんどなく、声はもちろん出...
認知症という病気は、患者さん自身の訴えは少なく、付き添いのご家族の訴えが多い。ご家族の心境として、運動の障害ならば心配というかたちで表れるが、同じ障害でも記憶の障害は心配ではなくしばしば怒りになる。 先日も、家で大声...
「もしもあなたが、意識がはっきりしているのに、目を開けることも話すこともできない、身体を動かすことも全くできない。そんな状態がずっとつづくとしたらどうしますか」NHKスペシャル「命をめぐる対話」(二〇一〇年三月二十一日...
前に取り上げたALS(筋萎縮性側索硬化症《きんいしゅくせいそくさくこうかしょう》)について少し詳しくお話ししたい。ALSは全身の運動神経が障害される難病である。根治療法は未だなく、人工呼吸器を使用しなければ診断から数年で...