死に至る共感
押し潰されるような重くのしかかる痛みといえばよいのか、ただ悲しい、恐ろしいという言葉では表しきれない事件が起こった。二〇二〇年七月二十三日、京都市に住むALSと診断されていた女性に薬物を投与して殺害したとして、二人の医師...
押し潰されるような重くのしかかる痛みといえばよいのか、ただ悲しい、恐ろしいという言葉では表しきれない事件が起こった。二〇二〇年七月二十三日、京都市に住むALSと診断されていた女性に薬物を投与して殺害したとして、二人の医師...
これまで「病と生きる」という題のもとに書いてきているが、病と生きるといっても、私自身はいまのところ重い病を抱えているわけではない。昔から体調を崩しやすく、年に何度か高熱を出して寝込むということはあるが、いずれ回復するよう...
「私は死んだ」そんな奇妙なことを言うのだ、と認知症外来でご家族から相談があった。夢を見たとか、そういうことではなく、死んだのだという。あまり流暢にはお話はできないが、直接尋ねても「そう、死んだ」とそこだけははっきりと答え...
認知症外来でのことである。付き添いの奥様がお疲れの様子であり、あとでそのわけを伺った。すると最近夫が暴力的で困っているという。普段は穏やかなのだが、急にスイッチが入ったように目の色を変えて手を上げると。認知症だからでしょ...
このたびの新型コロナウイルスの問題には、生きるという事態についてさまざまなことを考えさせられる。自分が生きるということが、他者のいのちと繫がっている、さらにいえば傷つけているということを改めて気づかされる。感染症というの...
前回は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者さんの言葉からはじめました。 「どうせ死ぬなら殺してほしい」——もう死んでしまいたい。自らが問われていない私は、その「死にたい」という声の奥にある叫びを聞く耳をもっていませんでし...
このたびの新型コロナウイルスの問題には、さまざまなことを考えさせられます。ただ不安になるのではなく、自分のあり方を確かめるきっかけにしたいと思っています。 「生きる」ということを改めて考えると、自分が生きるということが、...
「先週からちょっと咳がでているんです。いま話題の新型コロナウイルスじゃないでしょうね」診察中一度も咳をすることなく、発熱もない奥様のことを、心配とも世間話ともつかない口調で尋ねられる。奥様はそれを聞いて笑っておられる。 ...
みなさんは藤川幸之助さんという詩人をご存じでしょうか。お母さまがアルツハイマー型認知症の診断をうけて24年間介護されました。2013年に出版された詩集『徘徊と笑うことなかれ』のあとがきには、お母さまにとっては人生の三分の...
私はもう治らないんですね。どうせ死ぬなら殺してください。 研修医だったあるときに投げかけられた、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者さんの声です。非常に重い言葉を伝えられました。 ALSは難病中の難病。治療法がなく、全身の...